遮音性能(Dr値)とは?
移設劣化を防ぐポイントも解説 What is "Dr" value ?

Keep Sound room high performance マンション音漏れ


防音室を検討する上で、忘れてはいけないのが遮音性能。楽器演奏やゲーム配信、リモート作業など防音室の使いかたはたくさんあっても、まわりに音漏れしないだけの十分な遮音性能は必須です。長年使うことで遮音性能の劣化や、引っ越しで防音室を移設することもあるでしょう。

ご近所トラブルを避けるためにも、防音室の遮音性能や移設時のポイントについて一緒に確認していきましょう。


遮音性能(しゃおんせいのう)とは、防音室が音をどれだけ遮り外に漏らさないかという性能です。

よく聞く「音の大きさ」はデシベル(dB)という単位で表されますが、この数字が大きいほど大きな音、ということになります。ジェット機のエンジン音が約120dBですが、静かな住宅街、お昼の環境音(虫の声やささやき声など)で約40dB、になります。これくらいの音量であれば、他の生活音に紛れてほとんど気にならないレベルになります。


一方、防音室の遮音性能は主にDr値(ディーアールち)という数字で表されます。これは防音室の中と外との音の大きさ(db)の差を示すもので、一般に「Dr-○○」と記述されます。数字が大きいほど音がカットされ、Dr値が高いほど防音効果が優れていることになります。例えば「Dr-30」であれば、防音室内の音より外に漏れる音が30dB小さい、ということになります。Dr-30の防音室なら、防音室の中で100dBの音を出した場合、外に聞こえる音は70dBまで小さくなる、ということですね。

ちなみに、昔の名残で「D-○○」と表示されていることもありますが、これは「Dr-○○」と同じ意味です。

必要な遮音性能は音の大きさや環境で変わる

防音室でピアノ演奏


「防音室にどれだけの遮音性能が必要なのか?」これを考えるポイントはいくつかあります。具体的には、


・防音室の使いかた(楽器演奏、音楽配信、etc…)
・住んでいる環境(一戸建て、マンション、近隣との距離など)
・時間帯(昼、夜、深夜)


などですが、場合によってはそこまでハイレベルな遮音性能でなくても大丈夫なケースもあります。遮音性能を上げ過ぎて、思ったより出費がかさんだ…ということにならないよう、今の自分に必要な遮音性能を確認しておくことは必須です。

ここからは、楽器演奏の場合、まわりの環境、時間帯ごとに求められる遮音性能の目安を説明していきます。

楽器の種類ごとの遮音性能(Dr値)の目安


楽器の音量は、その種類によって大きく異なります。代表的なものだとバイオリンで約85dB、ピアノで約95dB程度。音が大きい楽器ほど、防音室の遮音性能(Dr値)も上げる必要になることがほとんどです。


経験上、グランドピアノやアップライトピアノでDr-30~35前後(音を30~35dB小さくする)の遮音性能が必要になることが多いです。ピアノの場合は高音が中心ですが、音量が大きいためそれなりの遮音性能が必要です。一方、ドラムの場合は音量に加えて低音や振動成分も強く、さらに高い遮音性能(Dr値)の防音室だけでなく、防音マットなどの対策も必要になります。


もちろん、楽器によっては細かな音の違いもあります。例えば電子ピアノやエレキギター(ヘッドホン使用)なら、生楽器よりも音量が低いので遮音性能は低めで済むでしょう。逆に管楽器や打楽器だと大きな音が出るため、防音室の性能はできるだけ高くしたおいた方が何かと安心でしょう。

住宅環境や周囲への影響を考えた遮音性能


同じ楽器、同じ音量であっても、住んでいる環境によって必要な防音室の性能は変わります。


例えば一戸建てでまわりの家と十分に離れている場合や、防音室が敷地内でも離れに置かれている場合などは、多少音が漏れても問題なく、遮音性能が低めでも問題にならないこともあります。極端なケースですが、都会ではなく郊外の一軒家、かつ昼間に演奏するのであれば、簡易的な防音室で十分ですね。


一方でマンションやアパートなど集合住宅の場合、隣の部屋や上下階への音漏れには細心の注意を払う必要があります。

同じ音量でも、壁一枚隔てた隣人にはっきり聞こえてしまえば、トラブルの原因となります。特に集合住宅ではわずかな音でも苦情になってしまうことも多いので、遮音性能についてはよく検討した上で防音室を選んでおいた方が、無用なトラブルは避けられるでしょう。


それとは別に、防音室まわりの環境ノイズも確認しておきましょう。例えば都市部の道路沿い、常に車など一定の騒音がある環境なら、多少音漏れしても目立ちにくくなります。これが郊外の静かな環境になると、ほんの僅かな楽器の音でも遠くまで響きやすくなります。

ご自宅周りの状況(昼間と夜間の騒音レベル、隣近所との距離)に応じて、「どのくらい遮音すれば迷惑にならないか」を見極めることが大切です。

演奏する時間帯による違い


時間帯も重要なポイントです。日中であれば周囲の生活音、環境音もそれなりにあるため、多少は音漏れしても気づきにくくなりますが、早朝や夜間は周囲が静かな分、わずかな音でも耳につきやすくなります。


昼間は気にならなかった音漏れが、夜には隣室ではっきり聞こえてしまった…というケースも。夜間に演奏するなら、日中よりもワンランク上の遮音性能があった方が望ましいでしょう。逆に演奏時間を日中のみに限定できるなら、そこまでの遮音性能がなくても問題にならない場合もあります。


防音室を選ぶ際は、「いつ音を出すことが多いか」、「生活リズム上、深夜に音を出す可能性があるか」も考慮し、時間帯に見合った遮音性能を検討しましょう。

防音室の遮音性能を決める要因

防音室の品質を決める要素


同じ「Dr-30」や「Dr-40」といった遮音性能でも、実際には防音室によってさまざまな構造や仕様の違いがあります。少し細かい話になりますが、防音室の遮音性能を良くするポイントを見てみましょう。

構造・壁材の質量
基本的には、壁や床、天井などの構造体が重く・分厚いほど音を通しにくくなります。コンクリートや石膏ボードなど、重い材質を使うことで遮音性を高められます。ただし一枚の壁では厚さを2倍にしても遮音性は数dB程度しか良くならないため、実際には複数の素材を重ねたり、二重構造などの工夫により効率よく遮音性能を高めています。

二重構造と空気層
壁を二重にして間に空気の層を設けると、一枚壁より格段に遮音性能が向上します。空気層には厚みがある程度必要で、数十cm程度の空間があると効果が大きくなります。

密閉性(気密性)の高さ
防音室はすき間なく密閉することも重要です。いくら壁自体の性能が高くても、ドアや換気口などに隙間があるとそこから音が漏れてしまいます。防音ドアにはゴムパッキンが使われ、閉めたときに隙間ができないよう設計されています。窓のある防音室では二重サッシや専用の防音ガラスが用いられ、隙間からの音漏れを防いでいます。

ドア・換気口など開口部の対策
防音室で音漏れしやすい箇所としては、出入り口のドアや換気扇・換気口があります。ドアには厚みのある防音ドアを採用し、周囲にシーリングやパッキンを設置することで音漏れを防ぐことができます。

換気口は防音室の空気を入れ替えるために不可欠ですが、そのままだと音の抜け道になってしまいます。そのため換気設備には消音機能付きのユニットや静音タイプの換気扇を導入することで音漏れを抑えています。開口部の処理は注意が必要な部分ですが、ここを丁寧に処理することで防音室全体の遮音性能は驚くほど変わります。
私たちのような業者にとっては、腕の見せ所です。

防振対策
音は空気中を伝わる空気音だけでなく、床や壁を振動させて伝わる固体伝搬音も近所トラブルの原因になります。特にドラムやベースなどは音域が低く、床や壁を通じて振動が伝わりやすい楽器です。街中のドームでアーティストやスポーツのライブ中継があると、周りの家には振動で家が揺れる…なんてことがありますが、それと同じですね。

防音室では、床を浮かせる「浮き床構造」を採用したり、防振ゴムを使うことで振動をシャットアウトします。また、壁や天井を建物本体と離す構造で、振動伝播を防ぐという方法もあります。

中古防音室を選ぶ時のチェックポイント

中古防音室検査


最近は新品だけでなく中古の防音室を購入して設置するケースも多くあります。中古防音室を選ぶ時は、その遮音性能が自分の用途に見合っているか、特に、劣化して性能が落ちていないかは要チェックです。以下にポイントを挙げます。

性能表示(Dr値)の確認
購入する予定の防音室について、カタログ上でどの程度の遮音性能を持っているのかをメーカーのHPなどで確認します。
モデルごとに「Dr-30」「Dr-35」「Dr-40」などの等級が示されています。自分の演奏楽器・音量や住宅環境ではその性能で十分か、ページの冒頭で説明した目安と照らし合わせましょう。もしスペック上足りない場合は、今後のトラブルを避けるためにも、より高性能なモデルを検討したほうが安心して演奏・作業できるでしょう。

パッキンやシーリングの状態
中古品では、ドア周りのゴムパッキンや壁パネル接合部のシーリング材が劣化している可能性があります。パッキンが痩せたり硬化して隙間ができてしまうと、遮音性能が低下する原因になります。販売店によっては中古防音室を販売する際にパッキン交換や調整を行っているところもあります。意外と早く劣化することもあるので、購入前にパッキンの状態や交換の有無を確認しておくのがオススメです。

組立後の密閉度
実際に組み立てた際にきちんと密閉できるかも重要です。中古の場合、運搬や再組立を繰り返すことでパネルやフレームが微妙に歪んでしまい、隙間が生じるケースも稀にあります。可能であれば実際に組立後の防音室内に入り、音漏れの具合を確認させてもらうとより安心です。扉の閉まり具合やパネル継ぎ目に隙間がないかもチェックしましょう。

メーカーや販売店のアフターサポート
中古の防音室はメーカー保証が切れている場合がほとんどですが、販売店によっては保証やサポートを付けてくれる場合があります。特に搬入設置後に不具合が発生した時、対応してもらえるかは重要なポイントです。


私たちのような中古専門店では、防音室の細かいパーツも含めコンディションを確認し、不具合があれば交換・修理してから販売するところもあります。ネットからボタン1つで何でも届く時代ですが、防音室はモノも大きくて高価な分、信頼できる業者から買うというのがいざという時のためにも大事だと思います。

防音室移設で遮音性能を下げないための対策

防音室移設による品質低下


現在防音室をお持ちの方は、引っ越しや部屋の模様替えに伴って防音室を移設することもあるでしょう。防音室は一度解体してからの再組立も可能ですが、注意しないと移設がきっかけで性能低下を招くことがあります。移設時に遮音性能を維持するためのコツを押さえておきましょう。

専門業者に依頼する
防音室は微妙な調整が必要な代物で、パネルの順序や締め付け具合一つで隙間が生じる恐れもあります。可能ならばメーカーはもちろん、防音室専門の業者に移設作業を依頼したほうがいいでしょう。プロであれば、再組立する時もしっかり気密を確保してくれますし、劣化した部品(パッキン等)があれば、その場で交換や再調整もしてくれるはず。

設置場所の確認と準備
新しい部屋では、防音室本体と壁・天井との間に適切な隙間を確保しましょう。壁にピッタリ付けてしまうと、建物を通じて振動が伝わりやすくなります。壁からは最低5cm以上、天井からは8cm以上離して設置するのが基本です。

また、床がフローリングの場合は、必要に応じて防振マットやカーペットを敷いて振動対策をしておくとより安心です。換気扇のある面を壁にくっ付ける場合は、空気の流れを確保するため数十cm程度スペースを空けるのが望ましいです。

移設後の調整とテスト
防音室の組み立て後は、内部からの空気漏れがないかを必ず確認します。扉とパッキンがしっかり密着しているか等を確認しますが、できれば実際に音を出してみて、移設前よりも音漏れが増えていないかテストすることも重要です。もし音漏れが大きくなっている場合は、どこかに隙間がないか再チェックし、必要に応じてパッキンの締め直しなどの対策をしましょう。

防音室の遮音性能と移設のポイントまとめ


ここまでで、防音室の遮音性能について、Dr値の意味やその目安、遮音性能アップにつながる要因や中古品選びの注意点、移設時のコツを解説しました。

大事なのは、ご自身の楽器や演奏スタイル、周囲の環境に合った適切な遮音性能を確保すること。「どのくらい音を小さくすれば、周囲に迷惑をかけないか」を考えつつ、適切な防音室を選んで正しく設置・維持することで、自分にも周りにとっても快適な音楽環境を実現することができます。


防音室の購入や移設を検討中の方は、ぜひ一度当社の防音室販売ページ防音室移設サービスのページもご覧ください。

当社では豊富な実務経験や、専門資格を持ったスタッフによる丁寧な施工サービスを提供しております。相談は無料ですので、気になる点があればお問い合わせページからご相談ください。

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